囚人番号23に寄せて 2幕

 

※西畑担のゆるゆる観劇感想文+記憶の整理文
※ニシハタ登場シーン以外ほぼ端折っています
一個人の曖昧な記憶と勝手な感想

※1幕は囚人番号23に寄せて - ゆっくり つよくなっていこう!

※そろそろストレート*1の少年たち観たい

 

 

漂着

西畑「俺はまだ生きてんのか…?少なくとも天国では無さそうやな…

西畑「ここは…別の島?


瞼もろくに開けられず、よろめきながらも置かれた状況を把握しようとするニシハタ。ふと大事な仲間たちの存在を思い出し、人が変わったように目を見開いて辺りを見渡します。

西畑「あいつらはどうしたんや?!……いや、あいつらならきっと無事に辿り着いてるはずや…

 

 

西畑「綺麗や…。こんな状況やのに、この星の美しさはわかる


満天の星空を見上げ、じわり涙を滲ませながら思わず笑みを溢します。こちらが泣きたくなるような綺麗な泣き顔で、曲イントロのピアノ音と相まって千秋楽の日は気付いたら顔面ダムでした


♪星をさがそう

原キーを下げ、従来より低くさらに落ち着いた世界観の曲へ。儚さと切なげなメロディライン・歌詞が特徴の伝統曲なのでキー変更は賛否出るかと思われますが、本シーンを演者としての西畑大吾に一任するための変更であることは明白ですので個人的にキー変更星をさがそうソロ、最適解だなと。この曲がここで歌われるたびハコごと愛してきた1関西担としても変わらない感想です。

 

また担当贔屓目線へ戻します。
西畑くん、単に音程を合わせて整然と歌うことだけに終始せず、紡ぐ歌詞のひとつひとつに背景と情緒を丁寧に乗せていくのが本当にうまい。そしてなにより、みているこちらが切なく苦しくなる表情を引き出します。場に佇んで一点を見つめるAメロでも、曲の盛り上がりに合わせゆっくり視線をずらしながら徐々に感情の起伏が大きくなっているであろうBメロでも、一瞬の隙もなく〝目と口でものを語って〟います。

 

それから、星をさがそう、照明の演出もとにかく美しいんですよね。

西畑くんの揺れ動く睫毛の指す方角までオペラグラスで追いたいのは山々ながら、3回に1回は肉眼でステージを見続けるよう心掛けていました。そもそも大好きな役者がたった1人で舞台のワンシーンを任されていること自体が何度経験しても感慨深いわけで。役者だけでも、舞台の板だけでも完成しない、舞台に立つ役者と背景と音楽と光とそのすべてを味わう時間がほんとうにとても楽しく、舞台演劇の醍醐味だなあとつくづく噛み締めます。
今年は♪僕に聞くのかい?の次に好きな照明でした。

 

折り返し期・最終週では関西アイランドで心配になるほど喉に限界がきていた西畑くんですが、裏声の出し方が以前より格段に上手くなったのかこのシーンでは千秋楽までほとんどハラハラせず世界観に浸って曲を聴けて良かったです。
私自身は西畑くんの歌声が本当に好みなので、色々な経験を通じて少しずつでも西畑くんが歌で表現することを楽しめるようになっているなら心から嬉しいです。圧倒的な歌唱力を持たない、だからこそつくりだせる歌声の表情は絶対に沢山ある。

 


墓場

西畑「墓場?この島には人がおんのか


たったひとつポツンとたてられたお墓に気付いたニシハタは、急いで駆け寄りまじまじと眺めます。

西畑「…ニシハタ……カズアキ……この名前………親…父?

 

西畑「なんで…嘘やろ…なんでこんなとこでくたばっとんねん!俺たち家族を捨てて、なんでこんなとこでくたばっとんねん!オイ!親父!答えろよ!親父!


これ、期間前半に観に行ったときは訳も分からず喚くというか、目の前の事実を受け止めきれずパニックになっている演じ方をしていたのですが、後半では「なんでこんなとこで…くたばっとんねん……」と茫然自失の言葉が近いような震えた口調になっていました。声を張り上げても張り上げなくても分かる、本舞台始まって一番のニシハタの衝撃。西畑大吾の本領発揮


思わず声を出したことで島の住民に見つかり包囲されるニシハタ。危機一髪のところで謎の青年に救われます。


西畑「お前は誰や…!
室「お前、カズアキのこと知ってんのか?あの人は俺たちの恩人やった。でも俺たちを守る為に死んだ
西畑「親父が…?
室「カズアキの息子なんか!?全部話してやる、ついてこい!


彼はダイゴの父(カズアキ)の存在をよく知っているらしく、ダイゴがその墓の主の息子だと気付いた瞬間すぐさま腕を引き島奥へ連れて行こうとします。

ニシハタは実の父親の痕跡から離れがたい素振りを見せるものの、青年が蹴散らした島の民たちを見渡しこのまま1人ではどうすることも出来ないと悟ったのか戸惑いの色を隠さないまま青年の後をついて行きます。

 

◇◇◇

室「監獄の島から来たんやろ、流されてくるのを見てた
西畑「こいつらは誰なんや!お前は一体…!

 

今は追われの身であるものの、自分はかつてこの島のリーダーだった、と青年は語ります。

室「お前の親父カズアキも、突然海の向こうからやってきた


ダイゴの父親、カズアキがこの島の民に知恵を与えたらしく

室「お陰で幸せな暮らしやった。…あいつが来るまでは
西畑「あいつって…?
室「あれを見ろ

 

陰に隠れるようニシハタを促します。そこに現れたのは

 

西畑「看守長?!


島の民たちを虐げ、彼らが抵抗しようとすると容赦なく痛めつけるムカイの姿が目に入ります。


向井「歯向かうものは徹底的にする。それがこの世界のルール


あちらの島だけでなく、こちらの島でも全てがムカイの支配下にありました。"この世界"を牛耳っている世界の王は今、彼にとって彼自身でしかないのです。愉悦に浸るムカイの元に、看守が伝言を運んできます。

向井「この島に流れついた者がいる。そいつらをすぐに探し、私に差し出せ

 

青年と顔を見合わせるニシハタ。驚愕の面持ち。
西畑「どこにも逃げ道はない、そういうことか…
室「ああ。俺もお前と同じ、追われの身や

西畑「クソッ…看守長の奴、この島の王様気取りかよ!!


向井「奴の息子がどう出るか…どうせ同じ運命を辿るだけだ。少しは楽しませてくれよ?ニシハタ…

 

♪Break Out!

18夏本編鳥肌ピリピリイントロ個人的ナンバーワン。まるで何処か果てへ向けて叫ぶかのように歌うニシハタの姿が印象深かったです

 

西畑「親父!聞こえてるか!俺は答えを求めてここまでやって来た!絶対にこんなところで終わりはしない!

 

間奏台詞中のニシハタがこれまでの彼とは同一視が難しいほどの熱量(内に秘め続けていた思い)を露わにしており、曲の盛り上がりと合わせて観ている側も一気に引き込まれました。今はもう届かぬ父親に向けての誓い。ここから先のニシハタは瞳の奥の色が完全に変化していたように思います。本当に良いお芝居だったため、台詞量に対する与えられた尺のバランス悪さが余計気になって。あの語尾が掻き消される演出が良しとは何回観てもどーーーしても思えないままでした。歌い出しとほとんど被らず言い切ってた回もあったんですが、西畑くんですら早口すぎて説明感がだいぶ強くなっていて。西畑くんの演技の大好きな要素を殺されたようなものなのでつい過敏になってしまいました。尺にあった単語表現にするとか、ニシハタに与える尺をほんの数秒長く取ってあれば…とか直後に考えてしまったことすらしんどいけど、それだけ台詞と歌唱中の演技は迫力があって素敵だったもんな〜とガタガタの情緒で自分の機嫌を取りました。えらい

曲が止み天を見上げたダイゴの横顔は、自らの進むべき道が明確となったことで徐々に取り戻されたであろう冷静さと、それでもまだ完全には父親の運命を受け止めきれていない苦しみが混在しており、揺れ動く心情を絶妙に表現していて更に次の展開へとしっかり生きていました。

 

◇◇◇

室「カズアキは最後にお前のことを話していた。すまないことをした、と
西畑「親父が…?


彼は"カズアキの形見"と言ってダイゴに少し古びたロケットペンダントを手渡します。中を開き目を丸くするダイゴ。

西畑「俺の写真…


室「家族を捨てたんじゃない、お前を愛していた。こうやって俺たちが出会えたのは運命なんかもな

西畑「親父……ッ……


青年に少し背を向けながらペンダントをやさしく手のひらで包み、額に擦り寄せたまま号泣するダイゴ。彼を側でみつめていた青年が再び口を開きます。ダイゴの仲間達はどうやらこの逆側の浜に辿り着いているらしいーーー


室「行ってみるか?
西畑「ああ
室「行こう


ペンダントを首に通し、胸元でグッと握りしめるダイゴのまだほんのり赤い目からは完全に迷いが消えていたように見えました。2人はその場を走り去ります。

 

 

◇◇◇

その頃反対側の浜では、トアの入水により哀しみに暮れ次々と心を弱らせる囚人達を看守が図ったように捕らえていきました。間一髪のところでその場から逃れたミチエダとタカハシは、仲間たちを助けた上で闘い抜くことを決意します。そこへ合流したダイゴ達。

 

道枝「ダイゴ!生きてたんか!…この少し歳上のお兄さんは(誰)?

 

ここからは今年の龍太と西畑くんに与えられたアドリブパート⇩

  • 前半週:西畑「年上やけど仲間や!」と迫真の演技で高橋道枝へ紹介→室「どんな芝居や!」的ツッコミ→西畑「でも…他の皆は…?」(超迫真)で元の芝居へ戻る 勢い押し切り型
  • 中盤以降:西畑「年上やけど◯◯の仲間や!」室「年関係ないよねぇ?」◯◯に日替わりネタ→それに合った台詞や物真似でボケる龍太→をガンスルーで龍太に背を向け(道枝の方を向い)て何事も無かったように場面を勧めるニシハタ シュール型
  • ↑最初のうちはジブリ回ししてたけど終盤はジャニーズグループも大半

 

個人的に崖の上のムニョが天才だった。あの日松竹座にいたうちの850人くらいは崖の上のムロと頭に浮かべていたはずだし、某主題歌を歌うのではなく名台詞をもじったところに圧倒的センスを感じて1番笑った回。

千秋楽翌日のかんじゅ日誌にて、名前を使用した全てのグループや作品に感謝の意を述べる西畑くんがザ西畑大吾でしたね。好きな西畑大吾だ。千秋楽の◯mazing!!!!!!で丈小島あたりにボケられたときと同じようなクシャクシャ顔で笑ってるのを眺めながら、きっとこの時間はニシハタを演じる24日間を過ごす中で少なからずも糧になってたんだろうな〜とか最後の最後に(勝手に)しみじみしてたのであの日誌は答え合わせしてくれたんかな?みたいな気持ちになりました。れは知らん

 

 

 

ミチエダとタカハシが仲間たちの現状をダイゴに説明すると同時に、舞台奥では看守長が監獄に連れ帰った囚人たちを更に手酷く痛めつけるシーンが。

 

西畑「俺はアイツを絶対に許さへん

道枝「でもどうやって…

西畑「俺たちでやるんや…中と外、同時に行動を起こす

 

ナガオに他の者の居場所を問い詰めるものの、当然知りようのないナガオは分かりせん…!と震えながらに答え、看守長から日記帳まで奪われてしまいます。

その間、おそらく内部を熟知しているダイゴは監獄の平面図を足元に描き、3人に今後の作戦を説明していきます。暗闇の中の真剣な表情がやはり彼がこの子たちのリーダーなのだと説得力のある頼もしさでめちゃくちゃに良かった。

 

高橋「刑務所の内側と外側、一気に動くんやな

西畑「ああ、俺はまだ生きてることがバレてない。二手に分かれよう

室「島の民は俺が説得する

西畑「お前らはもう一回監獄に戻ってくれ。…刑務所の仲間、島の民、今みんなの目からは希望の光が消えてる。俺たちでその光を点すんや

 

◇◇◇

 

長尾「僕、ここが好きや!

長尾「ここにいる、みんなが好きや!

 

絶望感の蔓延した監獄の中でひとり、最後の最後までその目から希望の光を失おうとしない少年がいました。ケントです。

 

長尾「僕、もし外の世界に戻れても家族も身寄りもない。…みんなが初めてできた仲間なんや!だから、元気出して欲しい!

 

お前に何が出来る、と吐き捨てられ黙り込むケント。そこへ駆けつけるミチエダとタカハシ。ダイゴから伝えられたあの島の真実と作戦を仲間たちに教えます。

 

◇◇◇

 

一方その頃、南の島では元リーダーの青年が島の民たちに作戦への協力を要請します。

今更何を、と反発する民たち。

 

西畑「話し合いたいんや!!

岡﨑「島の外から来たやつなど 信じられるか!

室「彼は我々の恩人、カズアキの息子や

西畑「本当の敵はあの塀の中におる!みんなも分かってんねんやろ?!

西村「でも勝てる相手じゃない!

室「いつまでも負け犬のままでいいんか?

 

西畑「俺たちの仲間もおる、力を合わせれば必ず勝てる

 

西畑「駆けぬけたその先に、明日があるはずや

 

 

ダイゴのこの台詞を皮切りに、BGMがSHINE ON→BIG GAMEへと変化します。展開はさておいてもこのイントロと共に駆け出す赤と青を見てしまうとどうしようもなくゾクゾクするのは松竹座の民の宿命なんだと思います…それとしゃいのん、かなりの新曲ですが個人的に暗闇が1つの光源からパァーッと次第に照らされはじめキラキラ輝きを帯びていくような、そういった情景を思い起こさせてくれるイントロなので劇中インストとしてもすごく気に入っている一曲です。本場面ではダイゴとケントからそれぞれ希望が伝染していったイメージでした。

ここからダイゴも青年と共に監獄の島に乗り込み、配電盤のブレーカーを落とすことで刑務所全体の機能を麻痺させようと試みます。

 

岡﨑「ここは俺たちが食い止める!

期間半ばあたりから岡﨑くん(島の民)がガッタガタに震えながら囮に名乗り出るようになり、室「ビビりすぎやと突っ込まれる要素が増えていました。こたろう可愛い

 

 

◇◇◇

向井「やはりお前か、ニシハタ

看守長と対峙するニシハタ、その目には深い憎しみとも怒りともとれる思いが刻まれていました。

 

向井「その死に損ないと手を組んでここから逃げるつもりか

西畑「俺は逃げるつもりはない!

 

 

西畑「お前と決着をつけるために戻ってきた。…親父の仇であるお前とな!!

向井「アイツとそっくりだな、その反抗的な目つきが!親子揃って俺に殺られにくるとは馬鹿なやつだなあ!

 

ニシハタはこれまで見たことのないような(1幕冒頭対看守長が生ぬるくみえるほどの)剣幕で、ムカイへと襲い掛かります。武器を所持する相手へ1秒たりとも怯むことなく素手で果敢に攻める彼へ、側で様子を伺っていた青年が警棒をパスします。

何発か食らうものの今までのように一方的にやられ続けることはなく互角にやり合うニシハタの気迫に目を止めたムカイは近くにいた看守をニシハタへ投げつける(文字通り)と、どこかへふらつき去っていきます。看守とぶつかり大きく蹌踉めいたのち倒れこむニシハタ。それとほぼ同時に現れる仲間たちがダイゴの名を何度も呼びます。そして肩を貸す青年。

 

西畑「こんなもん、かすり傷や…

大西「もうすぐや……もうすぐで俺たちも本当に自由になれる!

全員『ああ!!

 

◇◇◇

船着場へと歩み寄る囚人たちに忍び寄る影。すぐそこで響く銃声。驚愕の面持ちで振り返った彼らの目には正気を完全に失った看守長とその手に握られたライフルが映りました。

 

向井「どいつもこいつも大人を舐めるなよ…!俺の島から生きて出られると思うな!!!

 

向井「ニシハタ、お前のせいで…お前のせいで!!!!!

 

すると咄嗟に何かを振り切るようにギュッと眉を顰めたあと看守長を睨みつけて立ち上がり銃口の先へ佇むと静かに目を伏せたニシハタ。このわずか一瞬でのニシハタの覚悟とやりきれない感情を想像すると少し鼻の奥がツンとしました。看守長はカズアキに命より大切な物を余程酷い形で奪われたのか?と推し量らざるを得ないほどニシハタ一家への憎悪が凄い。自分の所有物(南の島)?と感じましたが時系列的にも違いますしね。この辺りの推察は範囲外〜。

 

向井「死ねぇぇぇ!!!

 

地の底から沸き上がるようなムカイの叫びと一際響き渡った銃声とほぼ同時に、ニシハタを斜め下から押し出した赤い影。ケントです。


押し出され呆然と伏せていたニシハタは、我に返って真後ろを振り返ります。そこで目が合うケントとニシハタ。それも束の間、貫かれた自身の左胸にそっと手を添えたあとケントの身体は力を失い落下していきます。反射的にその赤へ伸ばされたニシハタの指先は虚しく空を掴みました。

一瞬時が止まったのち、皆が一斉にケントの名を絶叫し、落ちていった彼を救出に向かいます。

 

その間、更に幾度か乱発しながら焦点の定まらない目で笑い続ける看守長、その目前まで無我夢中の様相で立ち向かうニシハタ(中期頃から段差を駆け下りお前…!と看守長を睨みつけるとすぐさまケントの元へ駆け寄るようになっていた)。

 

横たわったケントの上半身を抱き上げ、何度も何度も彼の名を呼び続けながら辺りを必死に見回すニシハタ。今にも泣き出してしまいそうな、まるで親を完全に見失った迷子のようでした。一刻も早い救護を求め必死になるその形相はまだ希望>絶望といったところ。

 

そんなニシハタの腕の中でケントがほんの僅か身じろぎます。

 

西畑「ケント…!!

長尾「みんな…無事か…?

西畑「ああ…!

長尾「僕にとってみんなは  はじめての仲間やから

 

そう告げた途端、ケントの身体は脱力します。もう誰の呼び掛けにも応じなくなったケントのまだ十分にあたたかい身体をより強く抱きしめ、最早叫びのように繰り返し繰り返し名を口にするニシハタ。ようやくその場へ駆け付けた看守たちがケントの保護と他全員の身柄の確保にあたりますが、もうニシハタの目にはケント以外の何も映っていないようでした。壊れた機械のごとく名を呼び続けます。完全に暗転するまで、いくら強引に引き剥がされようとも彼がその手からケントを離すことはついにありませんでした。

 

 


♪あいつのぶんも生きる

私自身が観た中では、ソロ途中から嗚咽が混じり始め最後の歌詞が音もなく消えてしまったり、アウトロでは目を細め天を見上げたかと思えば突然頭を抱えだし、シーン切り替わりの最後までニシハタの咽び泣く音が響き渡った回もあれば、呆然とした掠れ声で前半パートを歌い上げたあと色を失った目で胸元を握りしめそのまま膝から崩れ落ち、額を床に押し付け息を殺したまま泣き伏せていた回もありました。

 

1幕の記事にも書いた通り、ナガオとの出会いから変わっていったニシハタの表情ひとつひとつを振り返ったことでこの壮絶なまでの苦しみ様の所以を自分の中ではしっかり消化できた………のですが、活発な消化活動を行った結果『もしニシハタがこの台詞

長尾「僕、ここが好きや!
長尾「ここにいる、みんなが好きや!

を耳にできていたとしたら…』みたいなIfにも辿り着いてしまってリアルな方の胃まで痛くなりました。調子乗っちゃって〜なあの日々へ戻りたい。ただそれはそれでニシハタの幸せナガオの幸せを照らし合わせて考えることとなり無限ループ。結局は最期のケントと、本作ラスト(scene:ブランコ)ニシハタの表情が私にとって色んな意味で救いになりました

 

どの回もほぼ共通していたのは、ソロのパートを歌い終わったあと虚ろな顔で辺り左右をゆっくり、まるで誰かを探すように見渡す動作を取っていたこと。このあと自らの右頬に触れ、その触れた手をしばらく呆然とみつめていた日もあったのですが、自分が泣いていることの無自覚→自覚への移りとそれに付随する繊細な所作が観ていて本当にたまらなかったです。そしてそれら全てが終わると一気に溢れ出す涙。ここはもはや貰い泣きする余裕も無くて、自分から発する全部の音(呼吸音心拍音)を意識から消し去って西畑大吾の芝居の息づかいを全身で浴びることに没頭していたように思います

 

 

出所

今江「整列!

今江「本日をもって、全員の刑期を満了とする!

伏し目がちにフッとほほえんだり、歯をみせて笑ったり、日によって様々

子どもの声と共に騒がしくなる門前。

 

西畑「お、新入りか?」

 

♪僕に聞くのかい?

 

大西「これ読んでみろ

西村「なんやねんこれ

大西「ここでの毎日が書いてある

西村「こんなもんいらんわ!

西畑「いいから読めって!

ナガオが仲間たちと過ごした日々を心から幸福だと感じていたことをおそらくニシハタはこの日記でやっと知れたのではないでしょうか。だからこそ、ニシハタにとってこの日記はナガオからの救いのようなもの。この子たちが仲間を失くしてから気付くことのないように。新入りへ強くハッキリ言い渡します。

 

 

西畑「最初はみんなそうや。でも、ここで仲間が出来て変わっていく

岡﨑「仲間なんかおらんわ!

大西「いつか分かる日がくる。お前たちに

 

西畑くんたぶんもうこのへんで情緒がしっちゃかめっちゃかになってて、後半頃からこたろうへ絡んでいくアドリブを気まぐれで挟んでましたね。ちなみに条件反射で'17ニシハタを思い出した勢です。オオニシがニシハタへ無邪気に笑いかけるの、桶とここしかないので序盤は割と微笑ましくみてたんですが、やっぱりこの直後がニシハタにとってめちゃくちゃ大事な曲なのでやり過ぎてそうな日はちょっとの間薄目ってました。千秋楽は入れてなくてスッキリ◎◎◎  このがんばったこたろうへの西畑くんなりの歩み寄り・愛情表現がだいぶ露出しちゃったんでしょうね。期間後の雑誌や日誌で名指しで褒めまくってましたが、私も一観劇者としてこたろうの舞台に立つ意識の高さはビシバシ感じた夏だったので、ああやって1人の先輩から具体的にこの態度が良かった、と言葉にしてもらえたことでその意識を保ち続けてくれたら勝手に嬉しいなあと思いました 

 

大西「さあ行こう、俺たちの明日に向かって出発するんや

 

今江「もう二度とこんな所来るんじゃないぞ

西畑「いや、また会いにくる。それまであのブランコの丘で待っといてくれ!トアと…、ケントと一緒に

トアと、でオオニシとアイコンタクトを交わすニシハタ。

 

今江「これからの君たちの活躍、期待している!

 

♪君にこの歌を

 

何処か遠くに向かってまるで語りかけるように歌いはじめるニシハタ。その姿をただただじっとみつめるオオニシ

 

握りしめたペンダントを顔のそばまで持っていき、口元に笑みを浮かべるとそのままそれを天に掲げます。思いはもう届いている、大丈夫だ、とでも伝えるような表情でした。

曲中、おそらくトアに想いを馳せているオオニシを思いやる素振りをみせますが、オオニシ自身もニシハタの胸中をよく分かっていた(結局ここ2人はお互いの、特に複雑な負の感情を理解し合っていると捉えてもおかしくない仕草・目の動きが本当に多かった印象)(だからずっとRivalではないんだよな〜という話を大西担と期間中2万回くらい語った)んだと思います。敢えてここで長々と目で会話することもない。そっと互いに側に居ることを確認しただけ。おそらくそれぞれの痛みも。

 

あの曲ラストの手を振ろうとして、でもどうしても出来なくてもう片方の手でそれを押し込める動作はきっとナガオへの思いそのものであり、まだ手のひらの中にはナガオのぬくもりが微かに残っていたのかもしれないと感じさせられる演技でした。これはやってない日もありました

 

 

 

 

ブランコ

ブランコの元へやってきたオオニシとニシハタ。

 

西畑「ケント!…悪いけど俺たちは行く。でも寂しがるなよ、また遊びにくるから

大西「俺も!それまでトアのことは頼んだぞ。…トア聞いてるか!絶対迎えに来るから。それまでちゃんとケントに面倒みてもらえよ!

嶋崎「兄ちゃん、ぼくは大丈夫やから

 

西畑「おまえたちが迎えることのできなかった明日を、俺たちは精一杯生き抜いてみせる

大西「トア、ケント、おまえらのぶんもな!

 

微笑みを湛えたニシハタが、そっとブランコをやさしく揺らします。ふわりと揺れたブランコを眺め、2人の表情に柔らかさが蘇りました

 

西畑「行こか

名残惜しさを感じずにはいられないオオニシの肩へ軽く触れ、あえて目は合わせず促すよう先を行くニシハタ。それを受け取り、ほんのすこしゆっくりした歩調で歩みはじめるオオニシ。


昨年と違い完全に天の声だったトアと、日記の主が現れなかった今年のブランコでしたが、しきりに『迎えに来る』と告げて去るふたつの背中を目一杯押すというか、もう此処には存在しない自分たちを振り返らず明日を踏み出してほしい。2人なりのそういうメッセージだったのかもしれないと私は解釈しました。

 

 

 

唯一照らし出された誰も乗らないブランコと徐々に暗くなる舞台。タイトルが浮かび上がり終幕。

 

 

 

 

囚人番号23に寄せて    完

 

*1:演劇用語としてのストレートプレイを指すのではなく、ここでは『脱獄までの経緯に主軸を置いた演目少年たち』の意